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浅野太志 songe a Paris

パリでエテイヤ・タロットの取材を終えた、占い師・浅野太志の日々の活動をつづります。

ゼロから始める勇気

 今日は、タロット講座小アルカナ編の3日目の講座をやりました。
 小アルカナは56枚もあるので、何度かに分けて、それを最初に解説してしまう予定ですが、今日でやっと、半分の26枚が終わりました。

 それから、講座中に、「え~」 とか 「あの~」 とか言わないように、気をつけていました(笑)
  でも、何度か言ってしまった…

 さて、鑑定でも講座でもそうですが、何事も経験を積むと、だんだんと自信がついてきて、軽くこなせるようになってきます。

 「こうやればいいんだ」 みたいなものがわかってくると、心に余裕が出てきます。
 いつもと同じパターンで行けば、そこそこ結果は出せるので、それを繰り返していればいいという訳です。
 そういう意味では、経験というのは強力な武器になります。

 でも、人間は弱いから、そういうものがあると、それにどっかりと腰をおろして安住してしまいがちです。
 そのやり方で、たまたま上手くいったりすると、「このやり方で正しいんだ」 みたいな勘違いや思い込みがたくさんできて、身動きが取れなくなったりして…

 時がうつろい過ぎても、相手が変わっても、今まで培ったノウハウにしがみつかなければ生きていけなくなります。

 僕は、今仕事もそれなりにうまく行っていて、鑑定件数やキャリアもそれなりに積んで、何か変な自信がついてしまっているような気がします。
 いっその事、それを手放せばいいんですけど、手放したら全てを失ってしまうような気がして…

 自分のやり方を捨ててゼロからやり直すのは、とんでもなく勇気がいります。
 これを見事にやってのけたのが、フランス・パリの美の巨匠、ルノワールです。  喫茶店じゃなくて ですよ(笑)

 僕は画家の中で、ルノワールが一番好きです。
 ルノワールが描く絵の中の人物は、みんな生き生きとしていて暖かいんですね。
 
 ルノワールは印象派の画家の中でも、クロード・モネと並んで、比較的若いうちから自分の絵画を確立して成功した最も有名な巨匠です。

 画家として、ある程度の成功を収めたルノワールは、婚約者のアリーヌとイタリア旅行に行った時に、ローマで目にしたラファエロという画家のフレスコ画にすっかり魅了されてしまいました。

 僕は、このラファエロという人の絵も大好きです。
   サイゼリヤに飾ってある絵は、だいだいラファエロ

 でも、明らかにラファエロと、前期ルノワールの絵とは、全くタイプの異なるものです。

 さて、ローマでラファエロの絵に魅了されたルノワールは、この絵のスタイルを何とか自分の作品に取り込もうと、悪戦苦闘をしました。
 でもそれは、今までの自分が作り上げたスタイルをかなぐり捨てるようなものです。

 ルノワールの作品に 「雨傘」 という絵があります。
 よく見ると絵の左側と右側の筆のタッチが全く別物で、めちゃくちゃ違和感があるんです。

 最初に絵の右側の人物を描いてから、イタリア旅行をした後に左側と雨傘を描いて完成した絵です。

 この頃は、作品そのものから、今までのルノワールの良さがすっかり消えてしまいました。
 そこにあるのは、ラファエロの画風を究めようとする、ゼロから始めた修業中の画家の筆使いでした。
 ルノワールの支持者は、すっかり失望し、肖像画の依頼などはめっきり減りました。

 一番悩み苦しんだのは、ルノワール自身だったと思います。
 普通の画家だったら、そんな無謀な挑戦はしないで、成功を収めている今のスタイルを貫き通すでしょう。
 でもルノワールは、あえてその危険を犯しました。

 それからいくらかの月日が過ぎた後、ついに、ルノワールは、本来の自分のスタイルを取り戻しました。

 オルセー美術館に飾ってあった、ルノワールの 「ピアノを弾く少女たち」 は、心の旅をしたルノワールが本来の自分を取り戻る事ができた作品です。
 (オルセー美術館については、3/21ブログ 「パリの休日」参照)

 人間は誰でも成功のパターンをつかむと、それを自分の物にしたいと思います。
 でも、それにしがみついていると、いつも結果はそこそこ出せていても、それ以上発展する事はありません。
 そこには 「慣れ」 しかないですから…
 感動もなければ、創意工夫もない。
 あるのは、「今まではこれでうまくいったから、次もうまくいくだろう」 という、裏付けのない自信だけです。

 そんなものに頼らず、もっともっといろいろ学んで、自分の中に取り入れていこうと思いました。

 鑑定を始めたての頃のドキドキしていたピュアな自分を取り戻そう…
 タロット講座からの帰り道、ふと、そんな気持ちになりました。


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